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JPMがお届けする不動産コラム 2008/7/7 vol. 25
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■土地代がタダでも合わない新築業界・・。
連日、食料・原油高のニュースが報道されていますが、鋼材・セメントを使う建築資材も関係者がため息をつくしかないほど上昇しています。
一部報道では、「この2年間の間だけでも45%アップ」などと伝えられていますが、現場によってはもっと深刻な状況に見舞われているようです。
先日、とある新築マンションデベロッパー業者さんと話しをする機会がありましたが、「従来70万円/坪でまかなえていた建築費が、現在110~120万円/坪まで上がってしまった・・。」と、悲鳴にも似た声を聞かされました。
110万円/坪で約60%アップ、120万円/坪だと約70%アップです!
これは今まで2000万円で造れていたお部屋が、3140~3420万円掛けないと造れなくなってしまったことを意味します。
これではいくら造っても売れませんし、売っても利益は出ません。
要は、商売として成り立たないってことです。
しかも、あくまでこれは建築費だけの話し。
土地代を考えると、一般消費者の方の手が届く範囲での提供は、ほとんど不可能に近い話しになってしまいます
特に、購入価格の上限が固定されている郊外・ローカル地方になればなるほど、「土地をタダでもらっても合わない」という、デベロッパー業者さん達のボヤキもうなずけてしまう事態になる訳です。
■中古マンション市場が元気なワケ
先日も「消費者は資材高騰で割高になった新規分譲物件を避け、中古物件に流れている」(7月5日、日本経済新聞)との記事が掲載されていましたが、冷え込む新築マンション市場を尻目に、中古マンション市場は比較的堅調です。
確かに私たち業界内での市場動向に関する情報交換をしていても、特に中古のマンションを中心とするリテール部門は、比較的堅調との声がほとんどです。
複数の要因が絡み合っての結果だと思われますが、その中でも1番の要因は価格でしょう。
本メルマガの第20号(20.06.02)でもお伝えしたとおり、以前にもまして新築マンションと中古マンションの価格の乖離幅が拡がってきています。
07年の都内における新築と中古の価格差を、年収倍率(年収の何倍で取得できるか)で比較してみましょう。
・新築 9.85倍=6122万円(平均販売価格)÷621万円(都内の平均年収)
・中古 5.53倍=3440万円(平均成約価格)÷621万円(都内の平均年収)
中古マンションも前年比で価格の上昇は見られるものの、適正範囲内と言われる5~6倍程度に収まっているのとは対照的に、新築はついに約10倍近くまで上昇してしまいました。
10倍って・・。10年分の年収です・・。
06年の段階でも全国で唯一8倍(8.58倍)を超していましたが、さらに拡大傾向にあることがよく分かります。
■今後の新築マンション市場の見通し
今後、年後半に掛けて、いくぶん新築マンションの価格調整が進むものと思われますが、やっても概ね10%程度とすると、それでもまだまだ高いというのが正直なとこではないでしょうか。
用地価格は一時のバブル的上昇は収まったといわれていますが、問題は建築費の方です。
今回の建築資材の高騰は、建築業界や日本国内だけでの問題ではないため、この先も以前のコスト水準には戻らないとの見方が大勢を占めています。
供給数も直近の08年1~5月ベースでみても、前年比で約30%マイナスです。
そうなると供給数も低水準に落ち込んだまま、自分の希望するエリアには滅多に新築マンションが出てこない。
たまに出てきても、到底手が出ない価格帯・・。
といったマイナスの連鎖から、新築が一般消費者から縁遠い存在になってしまう日も、遠くないのかもしれません。
そうなると一段と、割安感が際立つ中古マンションがクローズアップされる可能性が高いと言えそうです。